ドラム上達法~左手攻略 8 de junio 2003
殆どのドラマーが右利きであるとして、利き腕でない左手が、右手のようには思うように動かない事で悩んでいると思います(前提に当てはまらない、左利きの方は以後文章中の左と右を反対にしてお読み下さい)。
多くの方のプレイを拝見させて頂く中で、左手についても修練の積み重ねにより筋力等、右手同等のレディネスが充分整っているのに、しかしなぜか同等の理想的な動作をしないのには「動作イメージの欠如」があるのではないかという事に思い至りました。
左手を鍛えるのに、右手の快適な動作を見習って左手も極限まで同じように動作させる事で、その目的を達せようとする事はどなたでも考えるかと思います。
しかし、そういったトレーニングをする場合に、例えば右手の鋭い手首の引きを左手に移し替えるとか、右手の指がよく動くのを左手に移そうとするのはどなたでも既に実行している事でしょうが、右手は「特に何も考えなくても理想的な動作をする」という、動作させる時の思考方法に着目して練習する人は少ないのではないでしょうか。つい、「右手はこう動くのに、左手はどうしてこうは動かないんだ」とか、物理的な事象のみを追いかけてしまいがちではないでしょうか。
本当に両手を同じクオリティを持つ動作にしようと思った場合には、その「特に何も考えなくても理想的な動作をする」という右手の感覚までをも左手に移し替えることが必要だと思います。右手を動作させる時の思考パターンまでも左手のそれにコピーするのです。
なぜ右手が快適に動作するのか考えていくと、「右手を動かすときには無心である」という事が非常に大切な事に気が付きました。
筋力や神経の反応は充分鍛えたという方で、もう一つ左手が充分に動かないという方がいらっしゃいましたら、単純な筋力トレーニングではなく、右手を快適な動作に至らしめるその時の思考、に着目して練習すると思わぬ良い結果が得られるかもしれません。
わかりづらいかも知れませんが、私の言わんとするところは、自分の音楽をストレートに伝えるための手段としての技術を体得するには、非常に重要なファクターである、「効率の良い機械のような動作」をするといった物理的な項目のみでなく、よく訓練された利き腕の特徴である「特に何も考えなくても理想的な動作をする」、といったイメージをも物理法則を越えて利き腕でない手の方に移植する事が重要ではないのかという事です。
どう動かそうとか、そういった意識、それを持つ事自体が既に快適な動作の障害になってしまうのです。
(とは言いましても、左手の指や手首が思った速さで動かない等、筋力的トレーニングが足りない方はまずそちらの問題を克服しなければ、今、述べたような発想の転換をしてもそれほどの効果は期待出来ないとは思いますが。)
これは実際に音楽する時に「音楽そのもの」以外の思考(音楽そのものを楽しむだけでよいのに、テクニック等の、練習段階で気を付けなければならない事が気になる)が入ってしまうと上手に演奏出来ない、という事とも似ているかと思います。