やはりイスラムの国 2 oct. 2006
朝、空は晴れ渡っている。
こちらの朝は、7時だとまだ薄暗く、8時半でもまだ早朝といった感じだ。
すごい満ち潮。
部屋のある建物の下まで海水が行き渡って、海になっている。
カニやカワセミを観察しながら、満ち潮で海に浮かんでいるかのような錯覚に陥るベランダの椅子に腰掛けて、アテ振りでコンガやドラムを練習した。
こうしたアテ振り練習は楽器が持つ、音の格好良さに酔わずに済むから、良いリズムを刻むためには効果的だと思う。
当たる瞬間、全ての打撃にむち打つような鋭さが入るように。
ビールを1本空ける。
ティオマン島はリゾートアイランドであるが、マレーシアはイスラム国だから日に何度か、たとえ浜辺で戯れている時にでも不意にコーランがスピーカーから流れてくるのが聞こえる。
人によっては興醒めするかもしれない。
コーランの調べは半音を多用するもの悲しい旋法だ。
B-C-D#-E-F#-G-A#みたいな。
また夜、宿とレストランを行き来する途中では、誰がするのかいつも呪文のようなものを唱える声が聞こえてくる。
それからどんなに探しても、豚肉は食べる事が出来ない。
それを出すレストランも露天もないからだ。
私は豚肉大好きなのですが。
ちなみに我が第二の母国、キューバの豚肉は美味しい。
有機農法の飼料を使って育てているからだとか、野生に近い育て方をしているからだとか、噂は色々と聞くけれどもとにかくこれは美味しい。
ご飯を探しに集落へと出るが、今日はロティチャナイ屋をはじめ全集落が休業中。
空いていたのはサランインダーのレストランのみ。
仕方なくトーストにフライドエッグ、それに絞り立てのパイナップルジュースを注文する。
これで180円くらいか。
月曜のサラン集落はいつもに輪をかけて閑散としている。
素晴らしい空き具合だ。
桟橋に行ってみたが、空は青く水は透明だった。
クラゲも極端に少ない。
今日は充分に泳ぎが楽しめそうだ。
天気が良すぎるので、日焼けの用心に今回初めて白いTシャツを着て泳いでみる。
まずはサランサヤンリゾート前の珊瑚礁。
細長いカラフルなカワハギ系の魚が美しくもちょっと不気味。
ソウシハギというらしい。
天気は良いが海風が強くなり出し、泳ぎづらい。
ここの海岸は10人いると、今日は人が多いなって感じる。
とはいえサランインダー前や中国人宿の前にはいつ行ってもほぼ人っ子一人いない。
リゾート客は大体みんなダイビングかアイランドホッピングのツアーに出かけてしまうようだ。
次に桟橋を越えて中国人宿方面へ泳いでみる。
中国人宿のダイブショップ前、斜面に沿って珊瑚がびっしりと生えており壮観。
こういうところでよくウミガメや大きい魚を見る気がする。
ま、ウミガメもナポレオンも驚くほど浅いところにいることもありますが。
今回はまだ大物は一度ずつしか見ていない。
そうそう見られるものでもありませんけれど。
1時間半近く泳ぎっ放しだったので、中国人宿辺りの道に橋が架かる沖合、船を係留するロープが張ってある辺り、ここだけは浅瀬の珊瑚が切れているので、そこから上陸する。
今日は今回中、最も天気の良い日だ。
Tシャツを着て泳いでいたものの、カバーされなかった腕が陽に焼けてヒリヒリする。
珍しくレストランへお昼ご飯を食べに行った。
カンポンライスを頼むが、見た目がいつもと違う。
色が薄くて、しかも蒼い芥子が入っていない。
しかも量が極端に少ない。
食べてみてももちろん別の味。
だけどウェイトレスのお姉ちゃんは「カンポンフライドライス」と、はっきり言った。
・・・残念、今は材料が足りなかったんだな。
この島のレストランでは食べ物も飲み物も、毎回同じように出てくるとは限らない。
午後3時。
再び泳ぎだそうと思っていたら、あっと言う間にスコール。
雨が海上からこちらへと移動してくるのが見える。
しかし5分ほどでこれまたあっと言う間に止んだ。
晴れ間もある、お天気雨。
そして、瞬く間にまた良いお天気に戻った。
明るい陽差しの中、海岸の波打ち際で新婚のカップルがお揃いのTシャツを着てはしゃいでいた。
ちょっと水をかける仕草をしたりして、二人楽しそうに戯れている。
うん、いい感じだ。
脇には本格的なカメラマン。
さて、泳いでみると今の時間、全くクラゲがいない。
しかし浜には30cm超の個体が打ち上げられているのを見た。
このずんぐりしたクラゲがこれほど大きくなるのか、不気味である。
尾ひれが長く、二つに割れて色の白い、格好良い魚を見た。
コバンアジというらしい。
サヤン前の砂浜には人が10名以下。
しかし他の場所はもっと閑散としている。
桟橋にはなぜか朝からずっと警察の船が停泊して衛星のアンテナを立てている。
部屋に戻ると、今回初の停電。
あちゃー、ビールがぬるくなる・・・。
エアコンはなくとも、ドアと窓を開け広げておけば結構しのげる。
さて何時に復旧するものか。
停電には泳ぎから帰ってきた16時半に気が付いた。
ベランダから浜を眺めると、さっきの新婚カップルが今度はウェディングとモーニングを来て撮影中。
撮影が済むと移動。
新郎が新婦のドレスの裾を軽く持ち上げて、砂で汚れないよう、気を使っていた。
微笑ましい。
・・・風がなく部屋にいると暑いので仕方なく散歩に出る。
まずは中国人宿方面へ。
この宿の名前、正しくはサランビーチリゾートと言うらしい。
しかも一緒くたに考えていた、その先のバラック小屋はエリャズプレイスという、これまた別の宿であった。
いつもサヤン前からここまで泳いで、またUターンして戻るわけだが、あらためてここから遙か遠く桟橋に目をやると、これは珊瑚や魚を見る楽しみがなければ泳ぎきれないな、と思った。
エリャズプレイスでリスを数匹目撃。
あっ、ビール屋のお爺ちゃん・・・
中国人宿の、もちろん中華レストランでカールスバーグ飲んで、死んだように眠りこけている。
テーブルを前にイスで膝を折って。
休み時間には自分のところのビールは飲まないんだって、妙に関心。
自分の部屋の前でカワセミを見かける。
さらに桟橋へ向かう。
水がとてもクリアだ。
また泳ぎたくなるけれど、ここまで陽が落ちると残念ながら水中の視界はさほど利かないだろう。
夕陽がきれいだ。
サヨリが二匹、いしきりの石のように水面を跳ねて行った。
飛び魚かと思った。
サヤン裏の川でワニ・・・ではないけれど、大トカゲ同士がにらみ合っている。
お爺ちゃんのビール屋前で自転車に乗って帰ってきたお爺ちゃんとすれ違った。
夜の開店10分前の18:20。
結局部屋に戻ったのは18時半。
1時間半も散歩していた事になる。
なんだ結構広いじゃん、サラン村。
隣の部屋に人が入った。
カナダ人とインド人のカップルだって。
・・・無風でやや暑いぞ。
もう一度、水シャワーでも浴びるか。
水シャワーといえば、私は日本の生活でもいつの頃からか、大体6月半ばから9月半ばまで水シャワーで通しちゃいます。
全然平気、というか、体がクールダウンされて爽やかだから、やめられない。
湯船に入るのは旅先での100%かけ流し天然温泉のみ。
ここ十日くらいの泳ぎで確実に胸板が厚くなったようだ。
私の体はなぜか筋肉が付きやすい。
日常スタジオや家にこもりっきりで全く外に出ず、もうダメだ、と感じるまで体が弱っても、こうして短期間少し運動するとすぐに体力が復活する。
ありがたいことである。
日頃全然運動してなくて体がへばっているはずなのに、こうして環境が変われば初日から数キロ泳いでOKなのも不思議と言えば不思議。
19:10、辺りが闇に包まれるぎりぎりに停電から復旧。
やれやれ。
夕飯しにインダーのレストランへ。
久々にラーちゃんが注文を取りに来た。
非常に愛想が良い。
彼もやはりオカマっぽく声が高い。
今日もぴったりとしたシャツをお召しである。
野菜カレーが来た。
おや、見るにいつもとスープの色が違う。
少しトロっと濁りめだ。
・・・案の定スープには牛乳か何かが混ざっている感じだ。
それに何かいつもと違う香味を使っている。
私には以前のもう少し澄んだ色のスープの方が良かった。
具にも今まで入ったことのなかったトマトが入っていたり。
量も具は同じくらいだが、カレースープが少ない。
確信した。
今日はシェフが変わったのだ。
もし日本だったらシェフが変わっても同じレシピで作りそうなものだけど、ここはマレーシア。
前のテーブルの金髪カップル、男性は「エミリー」って、カタカナでタトゥー入れちゃってあるけれど、もし彼女と別れてしまったら随分と痛い傷跡になるよな、ってつい考えてしまった。
食後いつものように桟橋へ。
20:45、桟橋に着いたら、ちょうど警察の船が出航した。
小アジを鈴なりにサビキ仕掛けへと付けたまま、自転車で家に帰るおじさんとすれ違う。
お爺ちゃんのビール屋でスコールを6本買う。
お爺ちゃんは中国系のドラマを見ていた。
この人、中華系だったんだ。
ミスターポーは今夜もダイバー一行のかたわらで、BBQの魚をいそいそと焼いていた。
さてネットでもしに行くか。
インターネット屋、夜は無茶苦茶混んでいる。
空き席わずか一つ。
今回もメールのチェックのみにとどめる。
ヘススルバルカバのミスアミーゴスを聴く。
生前、折に触れ、生で聴かせてもらっていたアイデアが詰まっていた。
月がきれいだ。
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