サンチアゴ・デ・クーバ(Santiago de Cuba) 19 junio 2007
バスは意外にも寒くない。
どうやら膝掛けにしたタオルが効いているようだ。
ビアスール・バスも確か登場して10年近く経つから、そろそろガタが出始めているようだ。
座席のリクライニングが止まらない。
あとで立ち寄る予定のカマグエイには6時ちょうどに着いた。
写真:カマグエイのバスターミナル
トイレにいってみたが、水が一滴も流れない、なんとも素晴らしいトイレだった。
汚い話だけれど、手さえも洗うことが出来ない。
おしぼりウェッティは必携です。
外に出るとき声をかけたチョフェ(車掌)がサンチアゴで自分の兄弟の家に泊まらないか、と言う。
聞いてみると場所もなかなか良さそうだ。
1日15CUCだって言われたけれど、サンチアゴには4回来て4回とも12CUCで泊まっていると言ったら、それでエスタビエン(OK)だという。
行ってみる事を約束する。
ビアスールのチョフェはいつも真面目で親切な人ばかりだから、今回も多分大丈夫だろう。
フェルナンド、黒人。
彼には今後も色々と助けてもらう事になる。
ところで今回フジのFinePixF30とパナソニックのDMC-TZ3の二台のカメラを持参してきているので、その比較をしてみようと思う。
フジは昨年の今頃コンパクトでは一番人気のあったカメラで、パナソニックは今、一番人気のある機種だ。
写真:フジFinePixF30
写真:パナソニックDMC-TZ3
パナソニックは28mm広角と10倍のズームが魅力。
それからメディアが安価なSDカードというところも良い。
ただし、暗いところでの写りはやたら悪く、それからシャッターが遅いので、動く場面での撮影は苦手だ。
暗いところで写すための専用モードも備えているが、これを使うと画質がかなりザラつく。
つまり使えない。
また広角だから仕方ないのだろうが、画面の四辺が歪むところも気になるところだ。
液晶が大きいから電池の消耗が早い。
液晶はせっかく大きいのに、いざ撮った写真をその場で見るのには色々な情報がごちゃごちゃとディスプレイされて見づらい。
フジは例えば夜のライブやショーのような暗いところで写してもきれいだ。
それからシャッタースピードが速いので、例えば走るタクシーの車内から狭い路地を写しても思ったように写る。
この二点においてパナソニックはかなり使えない。
また、フジは電池の保ちが良い。
使い方にもよるだろうが、一週間ぐらいの旅では電池交換必要がないだろう。
それから撮った写真をすぐ見る場合、そしてまた写真をすぐ撮る場合、フジのワンプッシュ方式はストレスを感じない。
パナソニックのダイヤル式には時間がかかってストレスを感じる。
フジは液晶ディスプレイも撮った写真以外には何も表示されないから、確認にはとても都合が良い。
痛いところは値の張るXDピクチャーカードをメディアとして採用しているところだ。
しかも2GBまでの容量のものしか存在しない。
パナソニックの方では8GBのカードを何枚か持ってきているというのに、こちらは予算の都合で1GBx2、2GBx1だ。
また、パナソニックの広角28mmに慣れてしまうと、35mmの広がりでは風景を撮る時に不満を感じる。
私は日中の屋外ではパナソニックを主に使っている。
この広角と望遠はなんといってもやはり魅力がある。
遠くの被写体を10x望遠で狙っても手ブレしない、この性能は驚異だ。
それから一人旅の自分撮りに28mm広角は便利だ。
大体失敗なく自分が画面に収まる。
とはいえ、きちんと自分撮りをしたいならやはりポータブルな三脚は必携。
逆にライブなどの暗所では断然フジに軍配が上がる。
暗いところでストロボを使わなくても鮮明に写って気持ち悪いくらいだ。
大体ストロボ撮影というのはムードが出ない。
ちなみに、なぜか大抵の女の子はストロボで撮られた写真を嫌がります。
フジのコンパクトで28mm広角、10xズーム、SDカードが採用されたものが出たなら即買いなのだが、現実にはなかなかそうも行かないらしい。
デジカメなんて似たようなものかと思っていると、かなり機種に差があるから驚きます。
さて、外は快晴のサバンナが続く。
そんな中、結構な頻度で時折小さな街が出てくる。
賑やかな街角が垣間見えたかと思うと、8時ちょうどに今度はラスツナスへと到着した。
写真:賑わうバス待合室
一応外に出て、その後バスの車内に戻ると、やはりこの冷やし方は異常だと思った。
クーラーかけ過ぎ。
8:30ご飯休憩とのアナウンス(マイクなし、肉声のみ)。
小さなペソ(モネダナショナル)払いの屋台(車輪は付いていないが、そんな規模)。
レフレスコ(ドリンク)がコップ一杯1ペソ。
パンは1種類のみで5ペソ。
パンの名前は忘れてしまったが、脂身の多い肉を挟んだ安いヤツだ。
私は滅多にこれを食べない。
外人の女の子がペソを持っていなくて困っている。
隣にいたキューバ人のおばさんが彼女にレフレスコを一杯おごった。
外人は普通、この国ではドルよりも高価なCUC(兌換ペソ)払いのみだからね。
1CUC=24ペソ。
このレートは長い事ほぼ変わっていない。
一時期1CUC=25ペソになった記憶はある。
だけど、そんな程度。
街では1ペソでレフレスコ(清涼飲料)、3ペソでバティド(果汁+ミルク)が飲める。
対して1CUCでセルベッサ(ビール)、あるいは0.5-0.7CUCほどでコーラが飲めるかも。
コーラとかは滅多に飲まないので記憶が危うい。
水のペットボトル500mlは0.5CUCくらいだ。
ちなみに、ここではトイレはなさそうだった。
本当に道端の露天にある、小さな店?だ。
この国の値段の付け方には極端な幅がある。
同じようなコンサートが30CUCだったり5CUCだったり、ときには無料だったりする。
宿一泊30-40CUCするところもあれば、地方なら10CUCで泊まれるところもあるらしい。
ハバナでは以前7CUCで泊まれたところが、今や一般的に25-30CUCだ。
以前23CUCで泊まれたビジネスホテルは現在60CUCほどもする。
本日1CUCは約138円。
しかもあの頃は1CUC=84円くらいではなかっただろうか。
もう遠い昔の話だ。
今にしてみれば貧乏な学習時代に最強の円が存在したのは巡り合わせといえば巡り合わせで、とてもラッキーな事だった。
最近では日本人観光客も激減しているらしいが、このレートでは無理もない。
私だって正直キツい。
バヤモには10:40到着。
ここでも確認のため一応トイレに寄ってみた。
水が流れて手も洗える。
入り口の人にチップを20センターボ渡す。
だいぶ陽射しが強くなってきた。
写真:街角で見かけた乗合馬車
11時を過ぎて、バスはどんどんと高度を下げる。
緩い下りが続き、耳が痛い。
12時。
サンチアゴ・デ・クーバ市内に入ると再びアナウンスが入る。
フィデル・カストロの弟であり、今彼に代わって国の舵取りをしているラウルの妻にして革命の戦士、ヴィルマ・エスピンが昨晩亡くなったそうで、弔いの行事により市内へはバスが入れないとの事。
ぐるぐると狭い路地をまわって、いつものビアスールのバス停ではないターミナルに停車する。
そう、ここは車庫だ。
3年前に忘れ物を取りに来た事のある車庫。
タクシーでフェルナンドの薦める宿へ向かう。
途中、フォコと呼ばれるカーニバルチームの名門、懐かしいロス・オヨスやカラバリの家がある付近を抜ける。
宿が近づいてくると、なんとそこは・・・
3年前に泊まったファン・カルロスの家だった!
これは運命だな。
話を聞いていて近い場所だなとは思っていたけれど、まさかドンピシャリだとは。
彼、ファンカルロスも私の事を覚えていてくれた。
「ええっと・・・君は音楽家だったよね」って。
部屋に入ってみると、3年前よりずっとずっときれいになっていた。
ベッドもアメリカのホテルのようだ。
壁も美しく張り替えられている。
マレーシアやシンガポールでよく見かける方式のウオッシュレットになっている。
努力を惜しまない人なのだろう。
シャワーを浴びて街に出てみるが、街角から全く音楽が聞こえてこない。
カーニバル博物館も閉まっている。
今日は歌舞音曲が禁止されているそうだ。
せっかくここまで来た身としては残念である。
陽射しが強い。
街は色々と変わっていた。
腕時計を直したり、そんなので便利だったフェリア(露天市場)がその場所にはなくなっていた。
残念だ。
気を取り直してカラバリの家に向かう。
今日はエンサーヨ(リハーサル)のある日なのだが、さてどーだか。
はたしてエンサーヨは中止だった。
残念続きだ。
ついてない。
ついてないと言えば、コロンビアの街、カリブ海に面してひろがるカルタヘナでの出来事を思い出す。
カルタヘナといえばウキウキとする楽しい音楽、バジェナートで有名だが、その街を夜、バジェナートの楽団を乗せながら走るオープンバスがある。
私はそれに乗りたかったのだが、大統領選挙のために数日戒厳令が敷かれてしまい、残念な思いをした。
海辺では普通にバジェナートが聴けたし、戒厳令の前日までは楽しく走るオープンバスを見ていたのに、いざ自分が乗ろうとしたらNGだったという・・・。
さてカラバリ。
道を歩いているとあちらから気付いてくれたのはキューバ最古のフォコ、カラバリ・イスアマの長、ジョアングラ。
久々の再会を喜び合う。
最初に彼女へと投げかけた言葉は「おーい、今日はリハーサルないのかい?」だ。
最後にここを訪れた日から3年経ってしまったと言う気が全くしない。
家の中にはジャイリンや、彼女の息子であり、私がパドリーノ(後援者)のクリスチャンがいた。
後援者になる事については教会で洗礼もした。
クリスチャンは相変わらず恥ずかしがり屋であまり喋らない。
いやいや、この後はすぐに慣れてメチャクチャ活発に喋りかけてくるようになる。
名前の覚えも「コージ・フジータ」と、完璧だ。
インファンタ657の裏表紙で私が抱いている子がクリスチャンである。
6歳だから小学校1年生だそうだ。
カラバリの長、ジョアングラとカラバリのDVD化、あるいはCD化について話し合う。
サンチアゴといえば世界文化遺産のトゥンバ・フランセサが有名だが、このカラバリがキューバで最も古いフォコだ。
色々と雑談する中で給水の話が出てきた。
最近ピオ・ロサド通りにあるこの地区では、水が6日おきにしか出ないそうだ。
それは大変な事だ。
明日、水が来るって言ってたけれど。
宿ではホテル・カサ・グランダが近いせいで水が使い放題なのだけど、同じ市内でこの差別はひどいと思う。
ジャイリンの弟、チーチョは技術系の先生になった。
3年前にはまだ学生で、よく一緒あちらこちらへと遊びに行ったっけ。
勤め始めた今は、なんと日曜日にしか休みがないそうだ。
8月に結婚するとも聞いた。
あの頃よく遊んだもう一人、チャックは小学校の先生をやっているそうだ。
今は軍のボランティアに出ているとも。
時は流れる。
しばらくしておいとまする。
今宵、超珍しくサンチアゴの夜は静かだ。
音楽が聞こえてこない。
せっかくはるばるとやって来たのに残念です。
明日は全てが平常に動く・・・らしい。
写真:3歳にしてボニータ!
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