バラデロ(Varadero)の何気ない1日 3 julio 2007
バラデロでは海に突き出た砂嘴という、その地理的条件のせいであろうか、洗濯物が乾きにくい。
それともエアコンを常時回していて飽和水蒸気量を下げてしまっている部屋の管理の問題なのか。
とにかく洗濯物は洗って4日経っても何となくしなしなとしている。
以前洗い物が全く乾かず、水浴びしてもたちまちにして汗が吹き出てきて、とにかく湯気の中で暮らしているかのように高温で湿った、恐怖世界を体験した事がある。
コロンビアのカリから太平洋に出たところにある海辺の街、ブエナ・ベントゥーラの雨期。
2日間いて全く太陽が拝めず、常に高温でジトジト・・・マジ病気になるかと思い、もっと長くいる予定を切り上げてカリへ舞い戻った。
南米サルサの首都、カリで、ここブエナ・ベントゥーラに来れば太鼓の音楽が聴けるとの情報をキャッチしたのだが、残念ながらこういったものはタイミングが合わなければ耳にする事は出来ない。
で、バラデロ。
ここは今まで訪れたキューバの都市、ハバナ、サンチアゴ、カマグエイ、マタンサス、トリニダの中ではダントツで最も快適な気候を持つ都市だ。
それほど暑くない。
しかもなぜか洗濯物は乾かないけれど、ここにいてジトジトした皮膚感覚もない。
むしろ湿度は低めな気がしないでもない。
年間晴天日数は確か二百数十日だったはず。
確かにここにいたらこうして多雨期でさえも一日中曇りの日なんて滅多にないし。
なぜ洗濯物が乾きにくいのかナゾなのである。
バラデロの気候は快適そのものだ。
朝8時、9時に見える太陽の傾き加減は夏、同じ季節の関東地方5時、6時の頃と同じであろうか。
ハバナやここバラデロでは朝の訪れが遅い。
サンチアゴはずっと東にあるから朝が早い。
この違いは下関から地元千葉に戻った時感じる時差と同じくらいのものか。
例えば九州西部、野茂崎や九十九島、雲仙の温泉があるあたりまで行ってしまうと、ハバナ-サンチアゴ間よりももっと日の出、日の入りの時刻には差が出るように感じる。
九州西部では、夏の時間が実に有意義に流れる。
夜の訪れが非常に遅いから、日中明るい時に色々な事が出来る。
サマータイム導入、関東に住む私にとっては賛成すべき事項です。
海。
快晴で無風。
今日は海の男が言うところのベタ凪。
ビーチに人はわずか。
当然のように透明度は高い。
距離を測ると、海底に映る光の波紋はおおよそ自分のいる位置から25~30mほども見通せている。
砂底でありながら。
時折30~35cmほどの体長を持ったアジ科の魚の群れが目の前を通り過ぎる。
クルメサヨリのような小さいサヨリが表層を泳いでいた。
沖合で海面から首を出すと、そこは静寂の世界。
映画「タイタニック」で船が沈没した後、訪れた沈黙の世界のようだ。
あるいは静かな森の中にある湖面に浮いているかのような。
身体から離れて、魂のみが水面に取り残されてしまったかのような非現実的な感触。
とはいえ、遠くビーチからの歓声もかすかに聞こえてくる。
少し潜れば透明で、万が一、支笏湖か摩周湖を泳いだらこんな感じなのかもしれないと思った。
網を持った漁師がいる。
砂浜でちろっと足の裏を切った。
流木か何かのようだった。
砂浜はあまり清掃されていない雰囲気だ。
見るにはきれいだが、躊躇なく走る事は出来ない。
それから砂浜の植物にいわゆる日本で言うところの「どろぼう」に似た実を付ける草花があるので要注意だ。
どろぼうは振り払えばなんとか落ちるが、こちらの物は実だけ落ちてトゲは肌に残る場合がある。
また完全に取り除いても痛いのは、若干毒性を持っているせいなのかもしれない。
よくはわからない。
今日は泳ぎに出たのが早かったせいか、ホテルの部屋に戻るとベッドメイク中だった。
部屋の外で待ってメイドさんをせかすのも気が引けるから、水着で上半身裸のまま、財布だけ持ってビールを飲みに行く。
ついにマナカを飲んだ。
瓶は砂浜で危険だから、ここではプラスティックのカップを買うのが規則らしい。
で、瓶ビールの中身をそれに注いでもらう。
ビールは10ペソ、カップは3ペソだ。
隣のおじさんに「なぜマヤベを飲まないんだ?」と笑われる。
暗にこれは国民の飲む大衆的なビールなんだ、という意識が感じられる。
ハバナにいたならマナカは絶対に飲んでいるはずだとも。
ハバナでお祭りの時にディスペンサーダで出るのがもしかしたらこのマナカかもしれないな。
これはようするに発泡酒の類だ。
売り子に聞いてみるとフルータボンバ(パパイヤ)を副原料として使っていると言う。
昼を過ぎたが、今日はいまだに雲一つ湧き出てこない快晴だ。
季節を違えて冬のバラデロにいるかのようだ。
帰り道、さすがにアスファルトの持つ熱が裸足にキツい。
行列のピザ屋が今日は開いていた。
どうやら月曜が定休日だったらしい。
シャワーを浴びてからその例のピザを食べに行った。
今日はチーズのピザ(Pizza de queso)以外にもソーセージのピザ(Pizza de embutido)があったので、1ペソ高いけれど、そちらを頼む事にした。
これも美味しい。
あまりに天気が良くて海がきれいな色をしていたから、写真を撮りにいった。
ビーチで写真を撮っているとキューバ人にガン見される。
そりゃ変だものね、確かに。
ビーチにいながら服を着てカメラをセッティングする中国人。
暑いから、あまり時間が経っていないけれど、再び泳ぎに行く。
午後14時半くらいだろうか。
少し風が出てきて波立ってきたけれど、大したことはない。
泳いでいたら、ソンの生演奏がどこかの店から聞こえてきた。
急いで聞こえた辺りの地点に上陸した時にはすでに音楽は終わっていた。
残念。
だけど、今夜はバンドがありそうだ。
再び泳ぎだし、泳ぎ始めた地点に戻り、ビーチにあがってその後、露店を冷やかしにいく。
マヤベを飲む。
忘れていたけれど、マヤベもクリスタルもブカネロも全てオルギンのブカネロ社がつくっているのであった。
マヤベは安いし、アルコール4%ほどだから、ノドの渇きを癒すにはうってつけのビールだ。
店をかえて鶏を食べる。
露天で食べればラピドの6割6分引きだ。
それはおいておくとして、露天で食べていると店員や集っているお客さんと色々な話が出来るのがよい。
せっかくキューバにいるのに、キューバ人と接触がなければ寂しいではありませんか。
話をしていて感じるのは、キューバ人の基礎的教養の高さだ。
何気に市民が世界情勢について色々な事を知っている。
日本についても、一般的に関心が深いようで色々な事を知っている。
夕方、外に出るがやはり街は静かだ。
珍しくビールは飲まずにアイスクリームを食べてぶらつく。
初めてバラデロに来た時泊まったエラドゥーラのすぐ側にあるレストラン、ラ・ビカリアはいつ見ても流行っている。
今、突然思い出したが、エラドゥーラに泊まっていた時にはこのレストランによく来たものだ。
結局Uターンしてラピドでブカネロの生ジョッキを飲む。
選択肢がクリスタルかブカネロの場合、キューバ人は見る人見る人、殆どがブカネロを飲んでいるのに、なぜかクリスタルはおしゃれな雰囲気でより派手に宣伝されている気がする。
なぜだろう?
今日も雨が降らなかったな。
風が吹き渡って、いい夜だ。
しかし生演奏の音楽は聞こえてこない。
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